中国の昼食配達員、五輪選手も顔負けの速さ – ウォール・ストリート・ジャーナル日本版



 北京のお昼時、Guo Ziyangさんには遂行すべき任務がある。注文を受けた温かい食事の配達を1時間に7件こなすことだ。

 Ziyangさんは熱い麺が入ったプラスチック容器を携え、中心街の高層ビルに駆け込む。行きたい階に到着するエレベーターを待つ時間はない。最初に来たエレベーターに飛び乗り、可能な限り上の階で降りて、残りは階段を駆け上がる。

 顧客に商品を手渡した後は階段を駆け降りる。これで1件の配達が終わった。あと6件だ。

 中国の大都市では、このような光景が薄汚れた空や混雑した地下鉄と同じくらい見慣れたものになっている。ヘルメットをかぶってスクーターに乗る配達員が、昼時にビジネス街を突き進み、空腹のビジネスマンたちに麺などを届ける光景だ。オフィスビルのロビーは、食事を運ぶ配達員たちであふれる。

 中国では、安い労働コストと、スマートフォンの食事配達アプリの出現が相まって、職場のランチ事情が様変わりしている。食事はスマホを数回スワイプするだけで注文でき、顧客は月にわずか3ドル(約330円)支払うだけで、30回もの配達を受けられる場合がある。

サービス支える配達員の負担

 3つの主要な食事配達サービス会社が同じような価格体系の似たようなメニューでしのぎを削っており、こうした競争の負担は配達員に重くのしかかる。彼らは大半が若い男性だ。

 配達員たちの1日は午前10時ごろに始まる。まるで戦闘機のパイロットが駐機場に集まるように、スクーターで街の広場に集まってくるのだ。どこの会社の配達員かは、制服で見分けることができる。

 彼らの月収は700―900ドル(約7万8000―10万円)で、一部は配達の達成度を基準にしたボーナスとして支給される。だから急いでいるのだ。

 新しい注文が入ると、スマホのチャイムで通知される。配達員は配車サービスのウーバーの運転手と同様、顧客からの評価を受ける場合がある。サービスの評価が低ければ収入にも影響しかねない。

 上海で配達員をしているWu Yueさん(31)は毎朝、パンを4-5個か麺1杯を食べてから仕事を始めるという。

 Wuさんは「さまざまな配達の状況に備えてエネルギーが必要になる。配達するビルにエレベーターがない場合もある。エレベーターが混んでいて時間がかかりそうなときは、たくさんの階段を上らなくてはならない」と話す。

 昼の混雑時に1時間6件の注文をこなすのは普通だ。だが、Wuさんによると、配達員不足のときは、1時間に10件の配達を頼まれることもあるという。「これをこなすのは本当に難しい。配達が遅れると顧客は怒るが、自分はただ謝るしかない」

 中国人の食習慣も、こうした食事配達サービスの人気に拍車をかけている。中国では持参した冷たいサンドイッチではなく、できたての料理を昼食に望む人が多い。以前は昼時に外食する人も多かったが、安い配達サービスがランチの市場を侵食しているのだ。

 調査会社アナリシスによると、中国の食事配達サービスは昨年、売上高が前年比2倍の140億ドルに達したとみられる。

 上海の金融街で働く調査アナリスト、Yuchen Wanさん(25)は「以前は昼に外食していたが、数人がネットで食事を注文するようになると、残りの人たちもそれに続いた」と語る。「時々はオフィスを出て、外を歩く方が良いのではないかと自分に言い聞かせるが、これらのアプリは絶対にお得だ」




こんな記事もよく読まれています



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です