イエレン米FRB議長の会見要旨 – 日本経済新聞



 【ニューヨーク=米州総局】イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は15日、利上げを決めた連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見を開いた。会見での主な発言は以下の通り。

 ▼冒頭発言(量的緩和について)

 償還期限の来た米国債の元本支払い分や政府機関債・住宅ローン担保証券の元本償還分は引き続き再投資を続ける。大規模な長期証券の保有は金融市場を緩和的な状態に保つのに役立ってきた。今回のFOMCでもこの再投資の政策を将来どう変更させるかについて様々な点を討議した。まだそれについて決定には至っておらず、今後も討議を続ける予定だ。FRBのバランスシートの正常化(圧縮)はゆっくりと、しかも予期できるプロセスを経るという原則を守り、今後もっと具体的になったら情報を提供するつもりだ。

 ――バランスシートの正常化とフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導による金融政策について。

 「FOMCのメンバーはFF金利の誘導水準を動かすことが金融政策の状況を公に伝える上でより簡単な手法だとみている。我々はFF金利の誘導では経験を積んでおり、経済への影響についても予想しやすいからだ。FRBのバランスシート上での資産購入という手法は景気悪化が深刻な状況に直面したときに使う「頼みの綱」であり、日常的に使う金融政策にはしたくない」

 「金融政策の正常化は順調に行われていると述べたことに関して、具体的な言及はできない。量的にみて順調(に進んでいる)というよりも質的に順調というのが適切かもしれない。FF金利が特定の水準に達したから金融政策の正常化に達したというような数値化はできない」

 「我々が求めているのは、景気が拡大し、経済の行方に対する自信を持つことだ。バランスシートの縮小をゆっくりと進めた結果、景気低下リスクが高まり、再び金融緩和をする必要に迫られるという過剰な懸念をしなくてもいい状態を求めている。その意味で金融政策の正常化とは景気の見通しに対するリスクと自信が均衡したときであり、単にFF金利が特定水準に達することではない」

 ――金利引き上げのペースについて。

 「早急な利上げペースとは具体的に何かは言えないが、FOMCメンバーの予想の中間値である『今年中のFF金利3回引き上げ』はゆっくりとしたペースの引き上げといえる。景気の着実な拡大を保つFF金利の水準を維持することだ。雇用とインフレは我々の目標に近づきつつある。同時に景気悪化のリスクも均衡しつつある。FF金利を中立水準までゆっくりと引き上げるのに適切な状況になってきた」

 「2004年半ばにスタートした利上げ局面では、FOMCの会合ごとに金利を引き上げたが、今回はそのような状況は想定していない」

 ――新政権による大幅な減税やインフラ投資拡大などが実施された際、金融政策はどうなるのか。

 「新政権の経済政策のタイミングや規模、内容などの見通しはまだ不透明であり、中身がはっきりするまでは金融政策もそれに沿った形で議論することはできない。FOMCメンバーの中には財政政策の金融政策への影響を試算した向きもあるが、今日の会合で決定した金融政策は我々の純粋な景気見通しをもとにしている。新政権の経済政策を先取りして対応するのは空論以外の何物でも無い」

 ――声明文の「緩やかな引き上げ」から「only」という文言を排除した理由は。

 「この部分は小さな変更で意味を過剰に解釈する必要はない。景気は我々が予想する通りに拡大しており、今後の見通しも変わっていない。金利の緩やかな引き上げには変わりない」

 ――新財務長官と大統領には会ったか。

 「ムニューシン財務長官には2回会って、経済や金融政策の目標などについて話し合った。FRB議長が財務長官と定期的に会合を持つのは伝統的な習慣だ。今回も新財務長官と強い関係を築くことを期待している。大統領とも短時間だが会った」

 ――FF金利の中立水準とインフレ率について。

 「今後数年間で実質的なFF金利の中立水準は1%かそれをやや下回る水準になるとみる。2%のインフレ目標と3%のFF金利で、実質的に1%になるということだ。なぜこんなに低いかというと、金利の低下傾向は米国だけでなく、多くの先進国の傾向で、おそらく金融危機の前にさかのぼる。人口増加ペースの鈍化、生産性向上ペースの鈍化などが反映している。最近の研究では、実質の中立金利は1%よりさらに低く、ゼロに近いという推定もある」

 「現在の金利の低さは金融危機の後遺症ともいえる。それらは人々のリスクへの許容度が低下し、企業も出費を控えるという逆風になって現れた。こうした傾向は何年かかけてゆっくりと薄まるとみている。中立金利が財政政策の影響を受けることももちろんで、その程度は経済政策の内容と、経済の需要と供給次第だ。

 ――FRBが過去2週間ほどで利上げのシグナルをより強く送った背景は。

 「市場への情報発信の記録を見る限り、我々のコミュニケーションは一貫しているといえる。議会証言でも言及したように景気は我々の目標に沿って拡大し、リスクも均衡していることから、ゆっくりと金融緩和状態を取り去っていくことが適当だと判断し、公に語った」

 「市場関係者が2015年と2016年に1回ずつしか利上げしなかったことを踏まえた結果、最近まで我々の意図と市場の期待がかみ合わなかったのだろう。あの2年間がなぜ金融引き締めに慎重だったのかは、世界経済の減速といういくつかのショックがあったためと以前に説明した」

 「現在では我々の経済目標に近づいているが、金融政策は引き続き緩和的であり、低いながら中立FF金利へとゆっくりと近づけることが適切だ」

 ――国際決済銀行(BIS)は、世界の中央銀行が資産価格のインフレへの準備が不十分だと指摘している。さらに米国の株式相場はトランプ政権の財政政策が実際に実行されるまで待つ気はなさそうだ(先回りして上昇している)。こうした状態を懸念しているか。

 「私たちは経済見通しを決めるために金融の状況を注視している。当然株価は金融の状況に含まれる。株価の上昇は人々の消費を増やす一因になっていると考えている。同時に過去数カ月、低格付け社債のスプレッド(上乗せ金利)が縮小していることも、金融が緩和的になっていることを示すものだろう」

 「一方で、長期金利は上昇しており、ドルは若干強くなっている。アナリストらは金融に影響を与える様々な要素を勘案して指数を計算しており、彼らの結論としては金融環境は緩和的になっている。株式市場はその要因の一部であり、経済見通しにも影響を与えている」

 ――今週末のG20に、ムニューシン財務長官とともに出席するが、何を期待しているか。

 「参加国はいつも経済見通しについて意見交換し、それぞれの国の状況を報告する。私の目的は米国の金融政策を説明することだ。世界経済は良好な状況とはいえるだろう。前回のG20時より力強さを増している。リスクは前回よりも均衡しているが、世界経済には中期的に重大なリスクがまだ残っている。その点についても議論されることになるだろう」

 ――トランプ政権が検討している減税やインフラ投資が実行されない場合の経済への影響を懸念しているか。

 「前回の声明文で言及した通り、ビジネスと家計の両方で景況感は良くなっている。こうした景況感が実際の消費にどれほどの影響を与えているかはまだ不明で、将来に対する期待から消費が増えていると言うことはできない。この数カ月で、多くの企業で楽観的な見方が増えているというのは私と委員の多くが共通して感じていることだ」

 「しかし、一方で意見を交換した企業の人々の多くは、様子見の姿勢も持ち合わせ、投資を増やせるようになることに期待していた。もちろんこうした期待感が実際の消費につながっていると確認できれば、それは経済見通しに影響するだろうが、この時点ではまだ見ていない。ただ、景況感の変化は明らかで注目すべきものだ」

 ――FRB(の利上げ)が新政権が目指す経済成長の妨げになる可能性はないか。

 「その点で衝突するとは思わない。我々は物価安定の観点から経済成長を歓迎する。もし成長の加速を目指すのであれば、生産性を上げ、経済成長の潜在力を高めるという私がこれまで政権や議会に働きかけてきた政策が必要になるだろう。そのような変化は歓迎するものだ」

 ――経済指標の中には弱いものもある。トランプ政権の政策も不透明な中で、今利上げに動いた理由は。

 「国内総生産(GDP)は変動の激しい指標だ。数四半期の成長率の平均が2%程度になれば、2%成長ということができ、我々は今後数年間も2%成長が続くと考えている。この成長率は、高齢化で労働参加率が減っていくことを踏まえても急速な雇用の増加のペースと一致するものだ」

 「失業率はそこまで改善していないが、それは人々が労働市場に戻ってきているからで、労働参加率は過去3年間変わっていない。その意味では経済は過去数年間予想より成長の余地があり、雇用の増加があったことを意味する。そして将来にもまだ成長の余地があるだろう。実際、金融政策はまだ緩和的だ。労働市場が一段と改善し、失業率が向こう数年間にさらに下がると期待している」

 ――トランプ政権は商業銀行と投資銀行の分離を定めたグラス・スティーガル法の復活を目指しているが、正しい方向性だと思うか。

 「具体的な提案を受けていないので、21世紀のグラス・スティーガル法がどのようなものかは本当にわからない。私の解釈では、金融危機の多くの問題は投資銀行部門から発生した。危機後の改革では、シャドーバンキングの中心となった投資銀行が十分な流動性を持ち、マネジメントを強化するのが重要だった。それが我々の取り組みで、さらに前進するものを見てみたいが、これまでのところ反応することができる具体的な案が出てきていない」

 ――今回の利上げで消費者に伝えたいメッセージはあるか。

 「シンプルなメッセージは、経済の状況は良いということだ。経済の堅調さと衝撃に対する回復力に自信を持っている。金融危機以降、1600万程度の仕事が生まれ、失業率は下がった。多くの人が労働市場における自分の可能性について楽観的に考えるようになり、さらなる機会を求めて仕事を辞めやすい環境になっている」

 「もちろんスキルや学歴の低い人々が特別な問題に直面していることは把握している。しかし多くの米国人が力強い労働市場の恩恵を受けている。インフレ率も2%の目標に向けて上昇している。人々は経済の先行きに対して良い思いを抱いているだろう」

 ――国境調整税などの政策が短期的に急激なドル高を引き起こした場合の経済と金融政策への影響は。

 「答えるのが難しい質問だ。国境税は為替調整がない場合、米国内への輸入品の価格を引き上げるとともに、アナリストによるとドルの大規模な移動が起き、(ドル高になって)実質的に輸入品への国境税の影響を相殺する。その場合は米国の物価もしくは経済成長に影響はないだろう」

 「しかし、例えば安全を求めてドルに資金が流入するなどして急に大幅なドル高が起きた場合は、別の話だ。インフレ率を押し下げ、輸出の伸びにマイナスの影響を及ぼし、輸入を増やす傾向がある。正確にドルに何が起きるかは非常に不確実だ」

 ――共和党下院議員の一部が、監督担当の副議長が就任するまで規制に関する業務を進めないよう求めているが。

 「現在のところ、早急に進めなければならない規制の案件はあまりない。もちろん議会が可決した法律の規則を書く責務はあるが、スケジュールには比較的余裕がある」

 ――利上げをするには、賃金上昇が不十分だと批判する声もあるが。

 「我々の目的は、完全雇用と物価安定であり、その達成に向けどのような利上げの経路が適切かを考慮する必要がある。賃金上昇を抑制している要因の一つは低い生産性の伸びにある。労働市場の逼迫でやや(賃金に)上昇圧力がみられるが、賃金の伸びには生産性が重要な要素となる」




こんな記事もよく読まれています



コメントを残す