世界で強まる政治不安 日本株は中立で(窪田真之) – 日本経済新聞



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「世界で政治不安が広がっていることが日本株の上値を抑えている要因だ」

 日本株の先行きに不透明感が強まっています。相場の上昇をけん引してきた外国人投資家が日本株を買わなくなってきました。グローバルな景気は順調に回復してきていますが、米トランプ政権など世界で政治不安が広がっていることが日本株の上値を抑えています。

 日本株は、外国人投資家から見ると「世界景気敏感株」です。自動車など製造業の比率が高く、世界景気の影響を受けやすい構造となっているからです。製造業の比率が低く、IT(情報技術)、ヘルスケア、金融業などの比率が高い米国株とは明確に異なる構造です。

 世界的に製造業の景況が改善している今、日本株の評価はもっと高くなっていいはずです。ところが、日本株は世界景気敏感株であると同時に、「世界の政治不安敏感株」でもあります。世界中に自国中心主義や排他主義が広がるとき、日本の強みである輸出産業はとかく「とばっちり」を受けやすいのです。

■対応を誤ると日本車もバッシングのリスク

 尖閣諸島問題をきっかけに2012年に中国で起きた大規模な反日デモでは、日本メーカーの自動車が不買運動のターゲットとなりました。同じ日本製品でも日用雑貨はターゲットとなりにくい面があります。しかし、自動車は目立つのでバッシングの対象となりやすいのです。

 今は、日本車にとって最も重要な市場である米国で、トランプ大統領が保護貿易主義を前面に出していることが、日本メーカーにとって重大なリスクとなっています。トランプ大統領は、今のところ、中国とメキシコをたたく一方、日本は友好国と位置づけています。

 しかしながら、対応を間違えると、日本車もバッシングの標的になりかねません。実際、09~10年には米国でトヨタ・バッシングの嵐が吹き荒れました。トランプ政権については政権発足当初は大型減税やインフラ投資への期待が先行していましたが、2カ月が経過した今は楽観的なムードはなくなりつつあるようです。

 そんな中、3月16日に発表されたトランプ政権の18会計年度(17年10月~18年9月)予算方針は、世界に不安を与えました。軍事費を大幅に増やし、国際協力費や環境対策費を大幅に減らす内容でした。中国も対抗して軍事費を大幅に増やす方針です。米中の対決色が強まると、北朝鮮の暴走も含め、東アジアの地政学リスクが一気に高まる懸念もあります。

 欧州でも自国中心主義の広がりに加え、テロの増加、極右・極左勢力の拡大が懸念されます。政権が安定しているとみられていた日本でも、森友学園問題をめぐって国会が空転するリスクが高まっています。

 景気・企業業績の改善だけを見ていると、日本株が上がらないのが不思議ですが、世界の政治不安の広がりを見ると、日本株がさらに下げる可能性も否定できません。

 さて、こんなとき、日本株への投資はどう考えたらいいのでしょうか? 私は、投資判断は「中立」にすべきと考えます。中立とは中長期で保持していくにふさわしい、基準となる組み入れ比率を維持するということです。

 短期的な上昇を見込んでオーバーウエート(基準となる組み入れ比率より大きくすること)にすると、相場が急落したときに、大きな痛手を受けます。逆に短期的な下落を見込んでアンダーウエート(基準となる組み入れ比率より小さくすること)にすると、相場が急騰したときに、大きくもうける機会を逃します。中立は相場が下落しようが上昇しようが致命的な傷を負わないし、大もうけすることもないというポジションです。つまり、中立のポジションで相場がどう転んでもいいように備えるわけです。

 私は、漠然としたイメージとして、今年の前半は、政治不安があっても世界景気回復の勢いが勝り、世界的な株高が続くと予想しています。ただし、今年の後半になると、景気回復を買う流れが一巡し、政治不安の懸念が高まり、再び株が下がる展開と予想しています。

■予想が当たっても外れても大きく損しない

 ただし、予想はあくまでも予想です。予想が当たっても外れても、大きなダメージを受けないようにするのが、リスク管理の要諦です。だからこそ中立というポジションが大切なのです。

 機関投資家は通常、中立となる資産の組み入れ比率を決めて、運用しています。例えば、世界最大級の機関投資家で昨年末時点で144兆円の資産を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の「基本ポートフォリオ(基準となる組み入れ比率)」を見てみましょう。資産の組み入れ比率は、国内株式25%、外国株式25%、外国債券15%、国内債券35%です。

 それに対して、昨年末時点での実際の組み入れ比率は国内株式23.76%、外国株式23.16%、外国債券13.37%、国内債券33.26%です。残りは短期資産(現金同等物など)として6.46%保有しています。基本ポートフォリオと比較すると、国内株式、外国株式、外国債券、国内債券はそれぞれ1~2%アンダーウエートし、短期資産も保有しているわけです。

 個人投資家の皆さんも、自分にとって「中立となる国内株式の保有額」を決めて運用することが、リスク管理で大切でしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。

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 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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